祖父のこと
長くなるし文字にしたいだけなので流してください
亡くなった祖父はお喋りな人で
戦争中は芋しか食べられなかったから今でも嫌いだとか
昔家に雷が落ちて飼ってた犬が死んだとか
何回も同じ話をしてくれた
手先が器用でウッドデッキや物置、柵を作ってくれた
鳥が来るから鳥小屋を作ってみかんだのパンくずだのを入れてた
両親が共働きだったので
祖母と保育園の送り迎えに来てくれることもよくあった
なんでこんなに〜かわいい〜のかよ〜♪
という歌をいつも流してた
小学生になったある時母に突然怒り出した
お金のことで揉めてるみたいだった
母は説明していたが祖父は同じことを繰り返して祖母に止められてた
夜、父が帰ってから泣く母を宥めているのを見た
母が泣いてるのを初めて見た
中学生になったある時、また突然祖父が怒り出した
さっきも話したでしょ、と祖母が軽くあしらうと
雰囲気が怖くて顔を上げられなかったのでよく見えなかったが
げんこつで祖母を殴ったようだった
痛いと叫ぶ祖母にそれでも怒鳴りつけてる祖父が怖くて怖くてたまらなかった
それから毎日のように祖父が祖母を怒鳴る声がして
二階の自室にこもるようになった
下の階でドタバタ逃げ回る祖母の足音が今も耳から離れない
怖くて何もできなかった
警察を呼ぼうかと思った
でも祖父が逮捕されてしまうかもしれない
自分も殴られるかもしれない
と思ったら怖くて布団にくるまるしかできなかった
祖母が相談したのか母がじいちゃんがばあちゃん殴ってたって?と聞いてきた
うん、と答えて涙が止まらなくなって
怖かったよね、じいちゃん病気だから変わっちゃったんだよと言った
認知症なんだよと
夜中リビングからうめき声が聞こえて
おそるおそる見に行ったら
母さん、トイレがわからないと便を漏らしてうずくまる祖父の姿があった
ほどなくして祖父は施設に行き、亡くなるまで6年間会うことはなかった
祖父のことを嫌いになってしまった
でもお葬式ではしゃくりあげるほど泣いてしまって
遺体に触れることもできなかった
顔は知ってる祖父の顔だった
祖母は愛おしそうに頬を撫でていた
亡くなって数年経った今でも祖父に対して暗い気持ちはあるが
小さい頃の優しくて頑固な祖父も一緒に思い出されて
何年経とうと心がぐちゃぐちゃになるのである