管理人さん乙~
今年のうちに、そしてあまり人目に触れないところで。
先日ウクライナ国立バレエを見に行った時、
帰りの混雑を避けて駅前のスーパーで買い物して電車に乗ったら
なんとさっきまでオケピで演奏していたウクライナ国立歌劇場の人達と同じ電車になった。
楽器持ってるんだもん一目瞭然よ。
背ぇ高いな踊るわけでもないのに!
さっき何度もアンコールをねだった相手と同じ車両とか
落ち着かないにもほどがある。
とりあえず気づかないふりしよと思いながらこっそり横目で見てたんだけど
彼らの一人が微動だにせず天井眺めてるもんだから
なんだろと思ったら東急のTOQビジョンの映像を見てるらしい。
そこに映ってるのは劇団四季のライオンキングのCM.
あああ一音を落とすものは去れ演劇が外国の人に見られてしまった恥ずぃぃぃ
と思いながら小さくなっていると、映像は「ケダモノの子」のCMに。
なんだかわかんねーだろーなアレでも垢抜けてないのはわかるよなと
我が国の舞台芸術レベルに今更ながら悲しくなっていると
そしてCMは東急シルベスターコンサートになった。
オーケストラの演奏場面、オペラ歌手のどアップ、
そして画面にデカデカと出る「Silvester」の文字。
このけったいな風習の意味が伝わるかなぁと思いながら
自分はずっと横目でウクライナ人の演奏家の様子をうかがっていた。
(当たり前だが首都キーウの国立劇場の演奏家なのだから、超一流なんである)
やがて東急のCMタイムが終わり、ニュースの映像になった。
この日はゼレンスキー大統領が米国議会を訪れた日で、ニュース映像もそれをトップに取り上げていた。
と、ウクライナ人はとたんにふいっとモニターから視線を逸らしてしまった。
自分的には「?」であった。
だって外国で、自国の元首の活躍がニュース映像の真っ先に出たら嬉しくない?
オレらもがんばってる、大統領もがんばってるって思わない?
そのうち乗り換え駅が来て自分は下りたけど「?」の疑問はずっと脳裏にあった。
家に戻ってパンフを見返している時にふと思った。
もしかしてあのウクライナ人は現実に疲れてたんじゃなかろうか。
異国のフシギな演劇映像見たり、
クラシックコンサートが開催されてるのを見て
「ああ、自分の愛する音楽はこんな遠くの地でも息づいている」と
嬉しくなった後
一気に現実に引き戻されて、つらくなってしまったのだろうか。
バレエ団はこの夏にも来日してるし、ちょいちょい国外公演を行っているが、
オーケストラが海外に出るのは(コロナ禍もあって)3年ぶりだろうだ。
久々の海外で、どこまでも追いかけてくる現実に疲れたのだろうか。
……ウクライナの人たちが、誰もかれも24時間「最後まで戦う!」と
意気盛んなワケではないのだ、多分。
今夜、ジルベスターコンサートを聞きながら思う。
年明けも公演があるので、あのウクライナの演奏家はまだ日本にいるだろう。
あの人はどうしているのだろう。
どこかのホテルでTVを付けているのだろうか。
異国のTVから流れる音楽が、
どうかあの人の、一時であったとしても、安らぎになることを願う。