COVID-19流行下の日々を集団で記録する日誌

記録をつける

2020-05-08

今日僕は、未来から平和な時代にやってきた。
僕の使命は歴史を書き換えること。
たとえそれで自分が消える結果になろうとも、必ず人類を救って見せる。

計画通りに僕は、この2020年に降り立った。
コロナ禍の始まりの時代、世界はまだ暖かかった。
見上げれば空があり、行こうと思えばどこまででも行けた。
灰色の、完璧に清浄された空気に満ちた息苦しいシェルターに閉じ込められるなんてことは、微塵もなかった。
感染していないものだけが選りすぐられ、管理された小さな社会、運動義務が課せられ、身体を動かすことが歓びだったなんてにわかには信じられなかった。
でもどうだろう、この空、地面、それらは全て、自分の体に馴染んでいった。それもそうだ。この空もこの土も、自分の幼きころの記憶の中にあるのだから。
つまりは本当に、僕は帰ってきた。帰ってきてしまった。

この後の行動は決まっている。信頼できる人間と接触し、日本の専門家委員会にもぐりこみ、半年後に設立される国際対策チームの選定において、自分の知る未来の情報を公開する。
まずは協力者のもとに向かい、この世界での「人権」を得る。
そのためにも、初動は間違えてはいけない。慎重に行動しなければならなかった。

だがさっそく障害があった。幼いころの自分自身と出会ってしまった。
派手にすっころんだ子供を助けたら、それが自分だった。

20年前の自分自身は、自分でも恥ずかしいほどのんびりとしていて、
はたしてふつうにやっても生きていけるのか心配になるほどだった。
ただ思い返してみると、このころの自分は確かにこんな感じだった。
親兄弟、友人たちに引っ張りまわされながら、楽しく毎日生きていた。
思春期を迎えるころには、もうとっくに終わりが始まっていて、情報統制された報道がゆるやかに僕らの認識を崩していた。
高校過程を修了するあたりになると情報統制も意味がなくなり、気づけばシェルターのなかで訓練と研究に没頭していた。おおよそ青春らしいことはできず、静かに理性を失っていく世界を生きてきた。
そこからいろいろあり、人類を救うエージェントの一人として、過去の土を踏んでいる。
のんびり屋の自分は、心の片隅にさえいなかった。

そして今、とうに消え去ったはずののんびり屋が目の前にいる。
砂場に頭を突っ込みそうになったところを助けてもらって、ぽかーんとしている。
もちろん過去の自分と接触することは禁じられているし、だからこそ自分が訪れたことのない場所に「落とされる」ことになっている。
観測部門がやらかしたのか、それとも「落とされる」場所が間違っているのか…

そんな妄想をしていたら、お昼休憩が終わっていました。

マスク、売ってないかなぁ…